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顧客対応は人工知能にお任せ!お部屋“探され”サイト「ietty」のエンジニアに聞く驚異のAI接客術

チャットでユーザーが入力した問い合わせや注文を、コンピューターが自動的に対応してくれる。そんな次世代のコミュニケーションツールとして「チャットbot」が注目を集めています。Microsoftがチャットbot技術のWand Labsを買収。また、FacebookやLINEなどのプラットフォームもチャットbot技術を導入するなど、大手IT企業が次々と同分野に参入し始めていることも、流行に拍車をかけているのです。

そのチャットbotを不動産のオンライン接客に活用しようとしているのが、お部屋“探され”サイト「ietty」を運営する株式会社ietty。同社のサービスにおいて、その基軸となる顧客とのコミュニケーションの一部をチャットbotに置きかえようとしているのです。

同社で開発責任者を務めるのが、今回ご登場する大浜毅美さん。大浜さんはietty代表小川氏が語る「人間がやっている“接客”という仕事を機械化したい』という夢に共感して同社へのジョインを決断したといいます。

「人間の勘と経験がなせるワザ」のようにも思える接客という業務。その領域に、テクノロジーはどのように切りこんでいくのでしょうか? 

エキスパートの人々の想いや技術を、コンピューターに宿らせる

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―iettyでは、不動産を探す手順が「①希望の部屋の条件をユーザーがチャットで相談する」「②希望に沿った部屋をiettyから提案してもらう」「③気に入った部屋をユーザーがチャットで予約して内見し、契約する」という3つのステップに分かれています。このうち、どのステップにチャットbotを導入しようとしているのでしょうか?

大浜:まずは2番目のステップに。そして次に3番目のステップにチャットbotを導入することを目指しています。

―ユーザーって100人いれば100人とも趣味嗜好が違いますし、それぞれが異なる要望を出してきますよね。ちょっと意地悪な言い方になりますが、その対応をbotが行うのって本当に可能なんですか?

大浜:おっしゃる通り、ユーザーごとに趣味嗜好は異なっていますし、そのバリエーションは無限に近いように思えます。けれど、実はそういった「大量にある煩雑なデータから、規則性を見つけ出していく」ということこそ、機械学習やディープラーニングが最も得意とする分野です。

それを実現するために、私たちは東京大学との共同研究を行っていて、ユーザーが求める情報を推定するアルゴリズムの構築を目指しています。これが実現すれば、どうやってユーザーの意識を抽出するか、要望ごとにクラスター(ひとかたまりの集団)分けするかといった、人間の営業が行ってきた業務を代替できるようになると考えています。

▲すでにiettyの機能の一部にはチャットbotが導入されている。検索結果以外の物件情報を見たい場合、チャットでリクエストすれば自動でユーザーに合った物件をbotがリコメンドしてくれる。

―人間が暗黙知で行ってきた作業の正体を、機械学習によって解き明かそうとしているのですね。

大浜:そうですね。ちょっと古い言い方になりますが、人工知能の中に『エキスパートシステム』という言葉があります。つまり、そもそも人工知能研究には「キャリアの長い方々が、勘と経験でやってきたことを機械に置きかえる」という発想があります。専門家の人々の想いや技術を、いかにして機械に組みこむか。そこが私たちエンジニアの腕の見せ所だと思っていますね。

人間とコンピューターが手を取りあい、統合的なプラットフォームを実現していく

―「人間とコンピューターの対比」という観点でもっとお聞きしたいのですが、両者の接客には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?

大浜:まず人間の良いところは、丁寧な接客と、経験に基づく豊富なバリエーションです。お客さまが無理難題を言っても柔軟に対応することができます。一方、コンピューターの良いところはスピードと広さ。人間は全ての物件をチェックすることはできませんが、コンピューターならば、何千、何万という物件の中から最適なものを選ぶことができます。

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▲iettyの勧めるチャットbot構想は、複数のbotの統合型システムを目指しているという。 資料提供:株式会社ietty

―それぞれが持っている長所が異なっているのですね。

大浜:そうですね。私たちが目指しているのは、「人間とコンピューターが協力して接客する統合プラットフォーム」のような形です。決して、完全に接客を機械化しようとしているわけではありません。両者に良いところがありますから、それぞれのアドバンテージを活かせる形で補完していければいいと思っています。

さらにbotも1種類ではなく、「こういう条件で探すbot」とか「こういう提案をするbot」といったように、複数の役割をもったbotがモジュールとして組み合わさっているような形でいい。その中のひとつの要素として、難易度の高い対応や柔軟性が求められる対応を人間が行うという形にできればと思っています。そして、その指揮命令をするオーケストラの指揮者のようなbotが全てのコントロールをするかたちが理想ですね。

その世界観の中では、人間とコンピューターには上下関係はありません。お互いの仕事を補いあって、共存しあう。そんな平等な関係を目指したいです。

―構想をお伺いしていると、そのテクノロジーは不動産以外の分野にも適応ができそうですし、大きな可能性を秘めていそうですね!

大浜:はい、そう思います。私たちが目指しているのは、「今まで大手のECサイトがどうしても商品化できなかったものにも適応できる、オンライン接客プラットフォーム」です。不動産や車、保険のように、金額が大きくユーザーと営業との密接なコミュニケーションが必要なものは、今までなかなかECサイトで販売することができませんでした。けれど、私たちが実現しようとしているプラットフォームならば、その壁を取り払ってくれる可能性があると考えています。

第3次産業には、大きなIT化の波が訪れている

―不動産業界のIT化が進むと、どのようなことが変化していくのでしょうか?

大浜:不動産業界では、物件を売る・貸す側は大きく分けると4種類の人や会社に分かれています。物件を持っている「オーナー」、物件の管理を行う「管理会社」、お客さまを探してくる「仲介会社」、SUUMOさんやHOME’Sさんのように物件の情報を掲載する「広告会社」です。IT化によって、集客をしたりお客さまの対応をしたりするコストが下がってくると、この中にある仲介会社の統廃合がだんだん進んでいくと考えています。

これは他の業界の歴史を見れば明らかで、たとえば小売業にしても、小さな町の酒屋やタバコ屋はなくなって、スーパーやコンビニ、ECサイトなどに取って代わられたりしましたよね。それと同じようなイノベーションが、不動産業界にも訪れ始めていると見ています。

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▲大浜さんによる、各業界のIT技術の浸透度を示す分類。一次産業に近づけば近づくほど、IT技術は浸透しにくいと分析する。資料提供:大浜毅美氏

―これまでITの導入が不動産業界でなかなか進んでいなかったのは、どうしてなのでしょうか?

大浜:いくつか理由があって、ひとつはよく言われるように、規制の強い産業であるからでしょうね。規制は本来消費者を守るためのものですが、規制が強すぎるとITの導入というのは進みづらい。既得権益を守る力が働きますから。ただ、それよりも産業全体を俯瞰してみた場合、実は不動産業界だけが遅いというわけではなくて、IT化というのは第4次産業から第1次産業に向けて進んでいて、「ちょうどこれからが、不動産業界が所属している第3次産業がIT化されるフェーズにある」という方が理由としては大きいと感じています。

―初めて聞きました。それぞれの産業ごとに、IT化のフェーズが分かれているものなんですか?

大浜:はい。例えば農業・林業・漁業のように自然界に働きかけて富を取得するプリミティブな産業を第1次産業と呼びますが、イメージしてもらうとわかるように、この産業ってあまりIT化されていないですよね。その逆に、ソフトウェア開発や情報通信産業である第4次産業は、そもそもITがなければ仕事が成り立ちません。

そして、第3次産業には不動産・卸売・金融・宿泊などが含まれていて、これらの産業はこれからがIT化のフェーズなんです。私がiettyにジョインした理由のひとつにはこれがあって、「これからIT化が進んでいく業界に対して、自分のエンジニアリングで貢献していきたい」という想いがあったんです。

ユーザーを向く意志の強さが、真の意味でのユーザーファーストを実現する

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―今まさに変革が起ころうとしている業界に自分の力で貢献していく。それには大きな意義がありますね!不動産業界で働くエンジニアに必要なのは、どういったマインドなのでしょうか?

大浜:私たちのやっていることは、物件を探しているユーザーを対象とした「BtoC」のビジネスであると同時に、管理会社や社内外のスタッフを対象とした「BtoB」のサービスでもあります。そして、ユーザーの意見というのは基本的にデータを通さないと私たちに伝わってこないのですが、後者の意見はダイレクトに私たちに伝わってくるんです。これは実はすごく危険なことで、ともするとエンジニアは「ユーザーがどんなことを考えているか」よりも「顧客企業やスタッフはこういう意見を挙げてきている」ということを優先して開発してしまいがちになるんです。

―声が大きい側にどうしてもベクトルが向いてしまうのですね。

大浜:だからこそ、エンジニアに求められるのは「ユーザーを向く意志の強さ」です。会議をやったりすると、技術部門以外の部署は、ユーザーよりも顧客企業、不動産なら管理会社ですね、このtoBを優先する姿勢になってしまうことが珍しくありません。日々の業務の中では企業側の声を耳にする機会の方が圧倒的に多いわけですから、どうしてもそうならざるを得ない。だからこそ、その状況下でもユーザーを優先する意思を貫き通せるくらいのエンジニアが、真の意味でのユーザーファーストを実現できるように思います。

「カンタンお部屋探し」に宿る、泥臭いエンジニアの魂

インタビューの言葉の節々から、不動産業界への想い、そしてユーザーへの想いが溢れていた大浜さん。「チャットbot」という最先端技術の裏には、ある種“泥臭い”とも思えるほどの、ユーザーファーストのマインドがありました。

条件を選択して、ボタンをポチッと押すだけ。

そんな、指先ひとつのカンタンお部屋探しの裏には、エンジニアの熱い魂が宿っているのです。

取材協力:
株式会社ietty

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