TechClipsにCTO大浜のインタビューが掲載されました

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ビジネスモデル変更で前年比200%超!チャットボットと歩む、iettyの不動産戦略とは

人気を集めるチャットアプリのビジネス利用が進んでいる。なかでも、自然言語処理を活用した、チャットボット(chatbot/チャットを使った自動応答プログラム)が話題だ。そこで今回は、人工知能を活用した物件紹介に取り組んでいる、不動産スタートアップのietty(イエッティ)にお邪魔して、チャットボットの可能性について聞いた。

iettyが提供するのは、オンラインによる不動産仲介サービスだ。その特徴は、UI(ユーザーインタフェイス)にチャットを採用していることにある。現在、同社の技術本部長を務める、大浜毅美氏はiettyの現状について次のように話す。

「ビジネスは非常に好調で、売上規模も順調に推移しています。今年度は対前年比200%は固い状況です」


▲ 株式会社 ietty 執行役員 CTO 大浜 毅美氏
横浜国立大学卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。日経リサーチにて、ブログ分析サービス等のサービスの立上げに従事。ヤフーのR&D部門やグルーポンのBI部門のマネージャーを経て、マーケティングアプリケーションズ入社。執行役員CTO兼プロダクトデベロップメント部長を務め、2016年4月から現職。

好調の要因は、2012年以降、地道に取り組んできたチャット型サービスが、ユーザーに理解された格好だが、現在の形に収まるまでには紆余曲折があったという。

「当初iettyは、不動産仲介業者さんが利用する顧客獲得のためのプラットフォームサービスとして、サービス提供をはじめました。当社に登録した不動産仲介会社の営業担当者が、われわれが集めたユーザーに対し、チャットを使って物件を紹介。内見、契約につなげていただき、われわれはサービスの利用手数料をいただくというビジネスモデルです」

しかし、思わぬ所に落とし穴があった。

「不動産仲介業の繁忙期は3月なのですが、この時期に入ると、ユーザーからの問い合わせに対して、なかなか情報提供が行われなかったり、チャットの応答頻度が落ちたりすることが起こりがちでした。こうしたユーザーの体験を損なうような出来事を放置することはできないため、2015年1月にサービスの大幅な見直しを行うことにしたんです」

ITサービス業から不動産仲介業への転業を実行

見直したのは、自らのアイデンティティを根本から変えるものだった。

「宅地建物取引業免許を取得し、不動産仲介業者としてiettyの運営を行うことにしたんです。ですから、収益はプラットフォームに対する利用手数料ではなく、iettyで仲介した際に発生する仲介手数料から得ることになりました。いうなれば、ITサービス業から不動産仲介業への転業ですね」

2015年3月には、社内に自前のチャットオペレーションセンターを設立。ユーザーへの情報提供や内見の調整などは、このセンターを通じて行うようになった。これにより同社は、落ちかけたユーザー体験を改善したが、この見直しによって得られた成果はそれだけではなかったと大浜氏は話す。

「私たちは、2013年あたりから物件の自動レコメンドの研究をはじめ、2015年10月ぐらいから、本格的に自然言語処理や機械学習に取り組んでいるのですが、自分たちが不動産仲介業者になったことで、チャットの内容と商談の正否を関連付けることができるようになりました。これは、レコメンド精度を上げるのに必要な『正解データ』の取得がしやすくなったことを意味します」

とはいえ、ECサイトなどでよく使われている「レコメンド」のロジックをそのまま適用するのは難しいと大浜氏はいう。なぜなら、一般的な消費財と不動産とでは、商品の性質も購買に必要な条件も大きく異なるからだ。

「そのため、ユーザーの性別や年齢、家族構成、年収、ペットの有無、勤務先の所在地によってクラスタ分けをし、物件は希望エリアや間取り、広さ、築年数によってクラスタ分けをした上で、情報をパーソナライズするために必要な協調フィルタリングを行うといった、工夫をする必要があるんです」

『正解データ』を集めるため、サイトのUIにも工夫を凝らした。iettyでは、サイト内に紹介された物件をユーザーがどう感じたかを示す評価ボタンを用意し「見学する」「お気に入り」「興味なし」という3つのうちから、ユーザーがどれを選んだかという情報もレコメンドに活用することにしたのだ。ここに、チャットオペレーターや営業担当者の判断情報を加えて、精度を高める努力をしているという。

不動産情報サイトを利用したことがある人のなかには、「ユーザーが入力した条件に合致した不動産情報を出せば済むはずなのでは?」と、疑問を持たれる方もいるだろう。

だが実際には、ユーザーが指定した希望条件が相場に合わないことや、空きがないことが少なくない。その場合、ユーザーは自分で検索条件を改めて入力するか、諦めてサイトを去ることになる。こうした場合に人工知能による適切なレコメンドを行うことができれば、営業担当者の省力化を実現しつつ、ユーザーの利便性と成約率の向上が実現できると同社は考えているのだ。

「いくら『東京の白金台で3LDKの新築マンションを10万円』で住みたいといっても、現実にはそうした物件は、まず存在しません。そうした場合に必要になるのが『条件緩和』というプロセスです。ユーザーの属性や行動、求めている物件の性質などを見極めつつ、条件を拡げて納得感のある物件をご紹介することができれば、チャットボットでも優秀な営業担当者が行っていることに近い、ユーザー体験を提供できると考えています」

現状では人手に頼る部分がまだまだ多く、不動産仲介に最適なレコメンドシステムを作るまでには時間がかかるが、人工知能にまつわるテクノロジーの進歩とデータやノウハウの蓄積によって、課題を克服する日もそう遠くないと、大浜氏は見ている。

究極の目標は『ユーザー主体の不動産取引』を実現すること

もし、現状の課題が克服されれば、オペレーターや営業担当者がいなくても不動産仲介サービスは成立するのだろうか?最後にiettyが目指すサービスの方向性について聞いた。

「私たちは接客のすべてをチャットボットに移行させたいわけではありません。究極の目標は『ユーザー主体の不動産取引』を実現すること。これが実現されるなら、どのような技術を採用してもいいと思っています。ただ、これからビジネスを拡大するにあたって、レコメンドの高度化、自動化は不可欠です。人間とチャットボットがいかに協業して、ひとりのユーザーに対してどれだけ丁寧に接客することができるか。そこを追求していきたいと思っています」

目指すは、ギリシャ神話に登場する人馬が一体となった架空の生物ケンタウロスのイメージだという。

「ユーザーのなかには、すぐにでも引っ越さなければならない人や、物件の内見が趣味の方もいらっしゃいます。いずれ、チャットの内容などからユーザーの切実度を推測して、どの営業を担当させるかといった判断を自動化したり、日程調整などについてもチャットボット化したりすることがあると思います。いずれにせよ、大量の情報をさばくことが得意な人工知能と、言葉の行間やニュアンスを汲み取り、丁寧な接客ができる人間の特性を合わせた、ケンタウロスのような接客モデルを作れればと考えています」

紙とFAX文化が色濃く残る不動産業界の業務プロセスを、自らが不動産仲介業者となることによって変えはじめているietty。今後、不動産売買や不動産管理事業にも進出する計画があるという。人工知能と人のハイブリッドというスタイルによって、不動産業界に新たな接客スタイルを確立できるか。今後の奮闘に注目したい。

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